王子様は囚われ王女に恋をする
「カイル様、これを」

ブラッドが指さした先を見て、違和感を感じる。

王の手に、いくつか剣でできたと思われる傷があった。

「自害しただけならこんな傷はできません。
王は何者かと争ったのでしょうか…?」

ブラッドの言葉に広間を見渡しても、侵入者の姿はない。

ここは王族のみが知る隠れ部屋のはず。
侵入者がいるとしたら、それは王族のみだ。

「カイル様!王女と侍女を見つけました!」

兵士の声に思わず振り返ると
引きずられるように連れてこられる姿を見つけた。

兵士に侵入されて逃げる間もなく
隠れていたのだろう。

「アリシア…?」

記憶にあるのは少女の姿。

でも目の前にいるのは成長した王女としての彼女だった。

「あなたは…」

信じられないと言うように
エメラルドグリーンの瞳でこちらを見るアリシア。

次の瞬間、その桜色の唇から悲痛な叫びが漏れた。

「お父様っ、お母様!!!」

変わり果てた両親の姿にアリシアは取り乱す。

< 4 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop