王子様は囚われ王女に恋をする
(私は今何を言おうとしたんだろう…)

『これ以上あなたに優しくされたら
私はあなたを好きになってしまう』

そう言おうとしたことに気づく。

自分で自覚した途端に、恥ずかしさに体が熱くなった。

何てことを考えているんだろう。

両親を死に追いやった相手に対して
どうしてこんな気持ちを抱いているんだろう。

(お父様、お母様、ごめんなさい…)

両親の姿を思いだして、アリシアの目に涙があふれてきた。

「…っ」

「アリシア?」

突然、顔を覆って泣きだした彼女の体を
カイルが抱き寄せる。

「泣かないでくれと言ったのに」

アリシアはその体温に身を寄せそうになる自分が怖かった。

「…いやっ…離してっ」

カイルの胸を強く押すと、その腕から逃れて
馬車の隅で体を丸める。

「もう私にかまわないでくださいっ」

拒絶に驚いたようにカイルは動きをとめた。

「お願い…放っておいて…」

自分の体を両手で抱くように膝を抱える。

そんな彼女をしばらく見つめたあと
カイルは静かに一言「分かった」とつぶやいた。

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