王子様は囚われ王女に恋をする
天使
城外へ出かけた日以来、アリシアは部屋に閉じこもるようになった。

イライザが聞いても、アリシアは首を振るだけで
決して理由を話そうとはしなかった。

アリシアは自分がカイルに感じた気持ちに
強い罪悪感を抱いていたのだ。

部屋に閉じこもったまま、気がつくと涙を流しているアリシアは
食事もあまり取らなくなり、細い体はますます細くなっていった。

「アリシアの様子は?」

執務室で公務をこなしていたカイルは
手を止めてブラッドに尋ねた。

「お部屋からは一歩も外にお出にならないとか。
お食事もあまり取られていないようでイライザが心配していました」

ブラッドの言葉にカイルは表情を曇らせる。

「…そうか」

「あの日、何かあったのですか?」

ブラッドの言う“あの日”とは
アリシアを連れて城外へ出かけた日のことだ。

帰りの馬車の中で突然取り乱したアリシアの姿を思い出し
カイルは机の上においた手を握り締めた。

「アリシアを混乱させてしまったようだ」

「カイル様…」

ぎゅっと目を閉じて何かを考えている主の姿を
ブラッドは黙って見守った。

「ブラッド、明日から1週間隣国を訪問する予定だったな?」

「はい」

「ナターシャに使いをやってくれ。
しばらく城に滞在してほしいと」

「かしこまりました」

カイルの言わんとすることを察したブラッドは
さっそくナターシャに使いを送った。
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