王子様は囚われ王女に恋をする
タチアナを抱いたまま、カイルがアリシアのほうへ近づいてくる。

城外へ行ったあと、一度も顔を合わせていなかったカイルの姿に
アリシアはどうしていいか分からず、ただうつむいていた。

「アリシア、元気そうでよかった」

思いもよらない言葉をかけられて
驚いたアリシアはカイルを見上げた。

久しぶりに間近でみるスカイブルーの瞳は
安心したように穏やかな光をたたえていた。

「カイル様、アリシア様は天使みたいでしょ?」

「ああ、天使みたいにきれいだ」

アリシアを見つめたまま、タチアナの問いに答えるカイル。

面と向かって言われた言葉に
アリシアの頬が熱くなる。

頬を染めて視線をそらしたアリシアを見て
カイルは目を細めた。

「まあ、カイル様。お戻りでしたか」

中庭に出てきたナターシャは
カイルを見つけてかけよってきた。

「タチアナ、ほらこっちにいらっしゃい。
カイル様はお疲れなんだから」

カイルの腕の中にいる娘に向かって
ナターシャは手を伸ばす。

「いや、カイル様がいいの!」

タチアナは首を横に振ってカイルの首にしがみついた。

「こらっ、タチアナ」

「いやだもん!」

親子のやりとりを見ていたカイルが
クスクスと明るい声で笑う。

「ナターシャ、僕は構わない。
タチアナは妹みたいなものだから」

「えへへ」

タチアナはカイルの言葉にうれしそうに笑った。


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