王子様は囚われ王女に恋をする
セナールでは月に一度、王室御用達の商人が品物をもって城を訪れる。
おいそれと場外に行けない城勤めの者たちに品物を売るためだ。
アリシアはその日、ナターシャに誘われて中庭に集まっている商人たちのもとへ出向いた。
きれいな装飾品やドレス等を見て、アリシアは久しぶりにワクワクするのを感じた。
品物を見て回っていると、ふと見慣れた刺繍のドレスが目に留まった。
「アリシア様、懐かしいですね。
この刺繍はメルディアンのものです!」
イライザは久しぶりに見た故郷の刺繍に
気分が高揚しているようだった。
「本当に懐かしいわ」
アリシアはドレスを手に取った。
「お気に召しましたか?」
赤毛の女性がにこやかに近づいてきた。どうやら商人らしい。
アリシアはその女性になぜか見覚えがある気がした。
「とてもきれいなドレスですね。
刺繍が故郷のものによく似ているんです」
アリシアの言葉に赤毛の女性は微笑んだ。
「メルディアンですね」
「なぜそれを…?」
アリシアの質問に答えずに女性は言った。
「お安くしますよ。お似合いになると思いますし」
「あ、でも私はお金がないんです…」
セナールに来てから、何不自由していないアリシアは
自分がお金を持っていないということを今更ながらに気づいた。
その言葉に赤毛の女性は驚いたように目を丸くした。
「…そうですか。ではこれはプレゼントさせていただきます」
「え…?」
アリシアの手にドレスを渡すと
赤毛の女性は微笑んだ。
「でも…」
「これはアリシア様に差し上げたいんです。
どうか受け取ってください」
彼女が自分の名前を知っていることに
アリシアは気づかなかった。
「返すなんておっしゃらないでくださいね。
同郷のものとして差し上げたいのですから」
『同郷のもの』
その言葉がアリシアの胸に響いた。
「あ…ではいただきます。ありがとうございます…」
強引な彼女に押し切られるような形で
完全に返すタイミングを失ったアリシアは
戸惑いながらもお礼を言った。
おいそれと場外に行けない城勤めの者たちに品物を売るためだ。
アリシアはその日、ナターシャに誘われて中庭に集まっている商人たちのもとへ出向いた。
きれいな装飾品やドレス等を見て、アリシアは久しぶりにワクワクするのを感じた。
品物を見て回っていると、ふと見慣れた刺繍のドレスが目に留まった。
「アリシア様、懐かしいですね。
この刺繍はメルディアンのものです!」
イライザは久しぶりに見た故郷の刺繍に
気分が高揚しているようだった。
「本当に懐かしいわ」
アリシアはドレスを手に取った。
「お気に召しましたか?」
赤毛の女性がにこやかに近づいてきた。どうやら商人らしい。
アリシアはその女性になぜか見覚えがある気がした。
「とてもきれいなドレスですね。
刺繍が故郷のものによく似ているんです」
アリシアの言葉に赤毛の女性は微笑んだ。
「メルディアンですね」
「なぜそれを…?」
アリシアの質問に答えずに女性は言った。
「お安くしますよ。お似合いになると思いますし」
「あ、でも私はお金がないんです…」
セナールに来てから、何不自由していないアリシアは
自分がお金を持っていないということを今更ながらに気づいた。
その言葉に赤毛の女性は驚いたように目を丸くした。
「…そうですか。ではこれはプレゼントさせていただきます」
「え…?」
アリシアの手にドレスを渡すと
赤毛の女性は微笑んだ。
「でも…」
「これはアリシア様に差し上げたいんです。
どうか受け取ってください」
彼女が自分の名前を知っていることに
アリシアは気づかなかった。
「返すなんておっしゃらないでくださいね。
同郷のものとして差し上げたいのですから」
『同郷のもの』
その言葉がアリシアの胸に響いた。
「あ…ではいただきます。ありがとうございます…」
強引な彼女に押し切られるような形で
完全に返すタイミングを失ったアリシアは
戸惑いながらもお礼を言った。