王子様は囚われ王女に恋をする
強く抱き締められてアリシアはしがみつく。

(いまだけでいいから…離さないで)

カイルの唇がアリシアの首筋に触れる。
「あ…っ」

感じたことのない感触に思わず声が漏れる。

温かい唇が胸元に触れたとき、部屋の外からブラッドの声が聞こえた。

「カイル様、大変です!」

「何だ?」

動きを止めたカイルは、そのままの姿勢で答えた。

「王宮に刺客が入り込んだようです!」

刺客。

その言葉にアリシアの体が大きく震える。

それに気づいたカイルはアリシアの髪をやさしく撫でた。

「大丈夫。心配いらない」

カイルは体を起こすとベッドから降りた。

「すまない、行かなくては」

アリシアの唇に優しくキスをするとカイルはそのまま出ていこうとする。

「イヤっ、行かないで」

アリシアはカイルの背中にしがみついた。

「アリシア…?」

アリシアに向き直るとカイルは彼女を抱き締めた。

「すぐに戻ってくるから」

カイルの言葉にアリシアは首を横に振る。

「ダメ。行っちゃダメ…」

「大丈夫だから」

もう一度アリシアに口づけるとカイルは部屋を出ていった。

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