王子様は囚われ王女に恋をする
奪取
アリシアの傷が癒えたころ、カイルは王と王妃に突然呼び出された。

いつも顔を会わせていたが、最近はアリシアを交えて食事をすることが多かった。

でも、なぜかこの日はカイルに一人で来るようにと言う王の言葉だった。

両親が待つ部屋へ向かうとにこやかな二人に迎えられた。

「今日は話があってお前を呼んだ」

「そのようですね」

カイルの言葉に王妃は微笑んだ。

「相変わらず察しがいいのね」

「アリシアに聞かせたくない話ですか?」

王は警戒するような息子の言葉に苦笑した。

「まずはお前の意思を確かめようと思ってな」 

「僕の意思とは?」

カイルの問いに両親は顔を見合わせてにこにこしている。

(何なんだ?)

訳がわからないという顔をしている息子を呆れたように見て王妃は言った。

「アリシアとのことよ」

「彼女がどうかしましたか?」

両親は顔を見合わせると大きく溜め息をついた。

王が諦めたように口を開く。

「お前たちは思いあっているんだろう?」

「はい」

「私たちは早く孫の顔が見たいんだが」

父親の言葉にカイルはようやく事態を察した。

「そういうことですか」

「いつ結婚すると言い出すか待っていたのよ。でもいくら待っても何も言ってこないから待ちくたびれてしまったわ」

王妃の言葉にカイルは父親によく似た苦笑を浮かべた。
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