失恋ショコラ【短】
ジャケットを脱いで椅子に掛け、リビングと対面式になっているキッチンに食材を並べた。


ここに来る前に電話を入れたら、例によって高圧的な口調で『肉じゃがが食いたい』と要望があったから、慌てて近くのスーパーに駆け込んで揃えた物。


大手の出版社に就職出来たとは言っても、まだ2年目のあたしは“ひよっこ”でしか無い。


だから、“担当者”なんてただの肩書きに過ぎず、仕事の内容はこんな雑用ばかりなのだ。


ただ…


他の作家の担当者達はあたしのような扱いを受けている訳じゃないみたいだから、正式には『篠原櫂の担当者がそうである』と言うだけなのだろうけど…。


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