失恋ショコラ【短】
状況を把握した途端、心臓がバクバクと鳴り始める。


「あ……のっ、の、退(ノ)いて下さい……」


それを必死に隠して告げた自分(アタシ)に反して、篠原はあくまで自分のペースを崩さない。


「あ〜ぁ、全部落ちたじゃねぇか。勿体ねぇな……」


恐らく、ソファーの周りにも散乱しているであろう生チョコは、あたしの体の上にも乗っているのだろう…。


「……お前のシャツも汚れてる」


篠原は小さく呟きながら後頭部に差し込んでいた手を抜き、あたしのシャツの上に落ちていた生チョコを拾った。


形の悪いそれが、彼の口の中にゆっくりと消えていく。


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