失恋ショコラ【短】
不意に篠原の腕の中にいる事を思い出したあたしは、体を包む彼の腕を強引に退けた。


すると篠原に不機嫌な顔で見つめられて、今度はハッとする。


「げっ、原稿っ!!」


本気で叫んだあたしに、彼は指で耳を塞ぎながら眉を寄せた。


「先生、今すぐ原稿を書いて下さいっ!!今日こそちゃんと受け取って帰らないと、編集長に何を言われるかっ……!」


だけど…


本気で慌てふためくあたしに返って来たのは、有り得ない言葉だった。


「……原稿なら、1週間前に出来上がってるけど」


ケロッと吐いた篠原に、あたしは自分の耳を疑いながら目を見開く。


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