失恋ショコラ【短】
篠原のマンションを飛び出した瞬間、冷たい空気に身震いをした。


熱を帯びていた体が、ゆっくりと冷めていく。


だけど…


ラム酒の効き過ぎたほろ苦いチョコの味だけは、篠原との情事を記憶に刻ませるかのように口の中に残っていた。


その不本意な余韻を掻き消したくて息を吸ったけど、やっぱり微かなチョコの味だけは消えてくれない。


それはまるで、篠原があたしの内(ナカ)に住み着こうとするかのようで…


離れていても心を掻き乱す彼に、言葉に出来ない感情を抱いた。


それが“恋心”に似ている気がしたのは、きっとあんな事があったせいに違いない。


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