失恋ショコラ【短】
「遅い」


コーヒーを淹れて書斎に戻ったあたしに飛んで来たのは、不機嫌な感情がたっぷりと込められた言葉。


「すみません」


「たかがコーヒー一杯淹れるのに、何分掛かってるんだよ」


「すみません」


「『すみません、すみません』って、そればっかりだな。お前は何でも謝れば済むと思ってんのか?」


「いえ」


揚げ足を取るようなやり取りにもいい加減慣れたとは言え、つい大きなため息が漏れてしまう。


あたしが憧れを抱いていた作家は、人の心を打つような作品をたくさん生み出している人物とは思えない程、性格は暴君そのものなのだ。


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