ぽいど(仮名)
Prologue
「好きって、どういう事?」
少女は、僕が言った言葉がまるで
不快なものだったかのような調子で
言葉を吐き出した。
「私には、好きという感情が分からないの。
相手に対する自分の気持ちが、
不快、快しかないのよ」
早口で、身体中の酸素を吐き出すように。
力強い言葉が降り注ぐ。
と、思えば急に。
「ねぇ、教えてよ……」
砂糖菓子の様に甘く、壊れそうな声で。
「貴男は、私をどう思っているの?」
「貴男は私をどうしようというの?」
みるみる少女の瞳に雫が溜まる。
「ただ“好きだ”なんて言われても、
困るのよ……」
そう言い切ると、少女は、崩れた。