金星ロマンス

「あっ、杏奈ちゃん!」

弱々しい男らしくない男の声。わたしは杏奈と揃って家を出たことを後悔した。


杏奈は可愛い。顔だけは。それはわたしも認める。
だから杏奈に群がる男はいくらでもいる。杏奈は男の前ではちゃんと性格が可愛らしい女の子をえんじているのだ。現に今もこんなナヨナヨ男にわたしには絶対にしないような可愛い笑顔を浮かべてるんだから。



「一緒に学校行こ‥ってあぁ、篠澤さんもいたの?」

「うん。」


わたしと杏奈の扱いが違う。そんなことはもう昔っからそうだったから、今さらだけど。

「二人で行きたいから、篠澤さんもうちょっと時間ずらして。」

「はいよー。」


男と杏奈が並んで歩く。
その二人の後ろ姿を眺めていると不意に杏奈が振り返ってニヤリと笑う。
まるで悪魔のよう。

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