金星ロマンス
震える手であずきを優しく抱っこすると、あずきは死んだんだという事実が突き刺さる。冷たい。動かない。呼び掛けても目を開かない。しっぽをふらない。


「お前がいつまでたっても部屋にとじ込もってウジウジしてたから掘り返してやったよ」

ふと見るとあずきのお墓がグシャグシャになっている。



わたしは怒りで顔を真っ赤にしてポロポロと涙を流しながら思いきり杏奈を突き飛ばした。


「あ、綾子ちゃん!」

杏奈のお母さんがそんな言葉をかけたけど、今は耳に入ってこない。

思いきり突き飛ばした杏奈の軽い体は壁にドンとぶつかってそれから尻餅をついた。


「よくこんなくだらないことができるね。楽しい?わたしが悲しむの、そんなに楽しい?」

「綾‥」

「こんな腐った様なことしかできないなら、死ね。死んでいい」


わたしがそんな言葉を言うなんて思ってなかったんだろう杏奈は目を丸くした。そして、何があっても自分が悪くても口が裂けても言わなかった言葉を杏奈は言った。

「綾子、ごめん」




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