私のかえる場所
2章 出会いと嘘恋
姉のおさがりである
黒のスーツに包まれて
私は桜の木の下にいる
緑の多いこの大学は
4月になると至る所がピンクに染まる
推薦入試後にばっさり切った髪も
肩まで伸び
着慣れないスーツに
恥ずかしさを感じながら
母の構えるカメラのレンズを眺めていると
後ろから私を呼ぶ声に振り返った
「紗緒ー!」
肩したまである長い髪を揺らしながら
私の元に駆け寄ってきた