絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「え……いや……、何をって言われたら、分からないけど……、そんなこと言われると思ってなかったし……」
「じゃあ何のためにここに?」
「何かヒントくらいは……だから、そう。自分で返したら、中国で監禁されるとか……そんなこと自分では分からなかったから……、それを聞けただけでも良かったかな……って。だって、ほんと……何かしなくちゃとは思ったけど、勇気もないし……」
「……。とりあえず、まずは奴に電話をかけることだな」
「あ、ここでかけていいですか?」
思いつきと同時に発言。
「……、まあ、いいだろう」
彼も少し驚いたが、すぐに顔を元に戻す。そしてまた、丸いテーブルの隣に置いてあったタバコの箱から一本抜き、ライターで火をつけた。
香月は携帯を取り出し、満充電近いことを確認する。
「あの……どう言えばいいですか? 車を返したいんですけどって……あの、この番号に、私が知ってる番号にかけると、まず付き添いの人にかかるようになってるんですけど、本人に言った方がいいですよね?」
「まずは繋ぎに用件を話して、本人にかわればいいだろう」
「……うわー……」
目を閉じて、心底の闇に立ち向かう準備をする。
「あの、部屋の中に入ってもいいですか?」
「ご自由に」
最初からだが、ずっと靴を履いたまま、ドアの前で立ち話をしていたのである。この状況で、相手が自分に何か仕掛けてくることはないと判断し、香月は中へ入り込むことを決めた。
いや、そうでもしなければ、落ち着いて電話などできはしない。
「し、失礼します……」
とりあえず、巽がいる奥の大きな窓の方へと向かう。
「あの、それで……車を返したいんですけど、どうしたらいいですか? って言って、何故? って理由を聞かれたら、あなたのことを好きな阿佐子が多分、嫉妬して自殺未遂したから乗りにくいって……。
という感じでいいですか?」
「……」
「えっ?」
彼の意味のない視線につい戸惑ってしまう。
「いいんじゃないのか。そこでもう行く日にちも決めてしまえば一回の電話で済むだろう」
「……いつが仕事休みだったかな……。そんな場合じゃないか……」
「じゃあ何のためにここに?」
「何かヒントくらいは……だから、そう。自分で返したら、中国で監禁されるとか……そんなこと自分では分からなかったから……、それを聞けただけでも良かったかな……って。だって、ほんと……何かしなくちゃとは思ったけど、勇気もないし……」
「……。とりあえず、まずは奴に電話をかけることだな」
「あ、ここでかけていいですか?」
思いつきと同時に発言。
「……、まあ、いいだろう」
彼も少し驚いたが、すぐに顔を元に戻す。そしてまた、丸いテーブルの隣に置いてあったタバコの箱から一本抜き、ライターで火をつけた。
香月は携帯を取り出し、満充電近いことを確認する。
「あの……どう言えばいいですか? 車を返したいんですけどって……あの、この番号に、私が知ってる番号にかけると、まず付き添いの人にかかるようになってるんですけど、本人に言った方がいいですよね?」
「まずは繋ぎに用件を話して、本人にかわればいいだろう」
「……うわー……」
目を閉じて、心底の闇に立ち向かう準備をする。
「あの、部屋の中に入ってもいいですか?」
「ご自由に」
最初からだが、ずっと靴を履いたまま、ドアの前で立ち話をしていたのである。この状況で、相手が自分に何か仕掛けてくることはないと判断し、香月は中へ入り込むことを決めた。
いや、そうでもしなければ、落ち着いて電話などできはしない。
「し、失礼します……」
とりあえず、巽がいる奥の大きな窓の方へと向かう。
「あの、それで……車を返したいんですけど、どうしたらいいですか? って言って、何故? って理由を聞かれたら、あなたのことを好きな阿佐子が多分、嫉妬して自殺未遂したから乗りにくいって……。
という感じでいいですか?」
「……」
「えっ?」
彼の意味のない視線につい戸惑ってしまう。
「いいんじゃないのか。そこでもう行く日にちも決めてしまえば一回の電話で済むだろう」
「……いつが仕事休みだったかな……。そんな場合じゃないか……」