絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
夕貴は自分が悪くはないと言いたいのか、堂々と足を組んだ。
「えー!?」
「女ってのはどうして何もかも一緒なのかね」
「まあそりゃ……心配なんじゃない? 特に商売柄……え、奥さんとはどうやって知り合ったの? お客さん?」
「いや、ただのオーエル。水商売とは全然無関係だった人だからさ。まあけど、付き合ってて、唯一の身内だったばーさんが死んで。それでもういっそのこと、結婚しようって」
「全然知らなかった! だって阿佐子とは何回か会ったけど、全然言ってくれなかったよ?」
「あいつのことだ、忘れてんだよ、そういうどうでもいいことは」
「ああ、そうだね……」
ここは入院専用病棟のためか、周囲に人はほとんどいない。広い広いロビーはただの空間として扱われているようで、ここが病院だということを一時忘れてしまう。
「お前は何してるの? 変わりなく?」
「うんそう。ホームエレクトロニクス。この近くだよ。今も実家暮らし」
「独身?」
「うんそう。なんかねえ、こうやって近くで結婚されるとすごくうらやましくなるなあ」
「うんまあなかなかいいもんよ?」
「ケンカして出てきたのに(笑)」
「帰れば完全に忘れてるよ」
「あそう」
香月は少し笑って夕貴を見たが、相手はそうではなかった。
「……彼氏とかはいるの?」
澄ました顔をして聞いてくる。
「いるよ。結婚してもいいって言ってくれるけど。なかなか。なんかこう……ね?」
「まあ、あれだな。俺もばーさんが死ななかったら、こう、きっかけがなかったら勢いつかなかったかもしれないなあ」
「きっかけかぁ」
「どんな人?」
「会社の上司」
「へー意外」
「え、そう?」
「会社の人には手出しませんって感じがしてた」
「うんまあわりとその方向だったんだけど」
「そうかあ……」
夕貴が相槌を打った後遠くを見つめた時は、話しに飽きている証拠だ。香月は夕貴の態度を読み取り、即座に話題を変えることに、既に慣れていた。
「どうしよう。私も、今日ここにいようかな……」
「家近いんだろ? 泊まらなくても」
「あ、遠いの?」
「奥さんが仕事したいって言うからさ、奥さんの仕事の近くに住んでる。だからここからだと一時間半くらい」
「えー、職場までは?」
「一時間」
「えー!?」
「女ってのはどうして何もかも一緒なのかね」
「まあそりゃ……心配なんじゃない? 特に商売柄……え、奥さんとはどうやって知り合ったの? お客さん?」
「いや、ただのオーエル。水商売とは全然無関係だった人だからさ。まあけど、付き合ってて、唯一の身内だったばーさんが死んで。それでもういっそのこと、結婚しようって」
「全然知らなかった! だって阿佐子とは何回か会ったけど、全然言ってくれなかったよ?」
「あいつのことだ、忘れてんだよ、そういうどうでもいいことは」
「ああ、そうだね……」
ここは入院専用病棟のためか、周囲に人はほとんどいない。広い広いロビーはただの空間として扱われているようで、ここが病院だということを一時忘れてしまう。
「お前は何してるの? 変わりなく?」
「うんそう。ホームエレクトロニクス。この近くだよ。今も実家暮らし」
「独身?」
「うんそう。なんかねえ、こうやって近くで結婚されるとすごくうらやましくなるなあ」
「うんまあなかなかいいもんよ?」
「ケンカして出てきたのに(笑)」
「帰れば完全に忘れてるよ」
「あそう」
香月は少し笑って夕貴を見たが、相手はそうではなかった。
「……彼氏とかはいるの?」
澄ました顔をして聞いてくる。
「いるよ。結婚してもいいって言ってくれるけど。なかなか。なんかこう……ね?」
「まあ、あれだな。俺もばーさんが死ななかったら、こう、きっかけがなかったら勢いつかなかったかもしれないなあ」
「きっかけかぁ」
「どんな人?」
「会社の上司」
「へー意外」
「え、そう?」
「会社の人には手出しませんって感じがしてた」
「うんまあわりとその方向だったんだけど」
「そうかあ……」
夕貴が相槌を打った後遠くを見つめた時は、話しに飽きている証拠だ。香月は夕貴の態度を読み取り、即座に話題を変えることに、既に慣れていた。
「どうしよう。私も、今日ここにいようかな……」
「家近いんだろ? 泊まらなくても」
「あ、遠いの?」
「奥さんが仕事したいって言うからさ、奥さんの仕事の近くに住んでる。だからここからだと一時間半くらい」
「えー、職場までは?」
「一時間」