絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「で……。その人から出会った印にって、車をもらったの。BM。よくは知らないけど、限定版って言ってた」
「へー、え? 阿佐子と同じやつ?」
「うんそう」
「でもそりゃすごい。日本に数台しかないはずだよ」
夕貴の声のトーンが突然場違いなほどに上がり、車が好きだったことを思い出す。
「そうなんだ……。けど私、乗りづらいから全然乗ってないけど」
「乗らないなら慣れないよ」
「それで、その、榊と3人で会った日、その車を運転したいがために免許とったって言われて。けど私、見ても分からなかったの。その車が自分と同じかどうかなんて。似てる気はしたけど、なんか、それよりも阿佐子が免許を取ったことの方に気がいってて……」
「それでその後の薬の自殺未遂に繋がるのか?」
「そう……。榊は、私がその車をもらったことに、腹がたってるみたいだったから車返した方がいいって。
それでね、車返そうと思って、相手と連絡とったんだけど、オリテル待ちなの。けど多分プレゼントした車のことなんてきっとお金持ちは忘れてるのよ」
突然、右腕を痛いほど掴まれたかと思うと、
「お前、絶対やめとけよ」
と、しっかり目を見て釘を刺される。
「だ、大丈夫。人としては普通の人なのよ。阿佐子が好きになったのも、分かるの」
「ええ!? 大丈夫なわけねーだろ!」
掴まれた腕が痛かったが、余計な心配をかけてはいけないと、ムキになって続けた。
「だって実際阿佐子には何もしなかったわ」
「現にこうじゃねーか」
「それは……だって、直接関係してないし」
「わかんねーぞ」
夕貴はようやく手を離すと、大きく溜息をついた。
「思えば、相手はそれほど阿佐子に興味を持っていたわけじゃなかった気がする。阿佐子の話の中でな。あいつは一々大袈裟に喜んでいたけど、なんというかあしらわれてる感じがしてた。どっちにしても、危ない奴は絶対にやめとけって何度も言ったんだ。そしたら、あんまり言わなくなったから、てっきり……」
「夕ちゃんがしつこく言うから嫌になったんだよ」
「仕方ねーだろ!? 普通だよ」
夕貴の普通に、私たちは助けられているのかもしれない。そう思うと、その怒りの横顔が急に微笑ましく思えた。
「大体の内容は分かった。他言しないよ。あいつも言わないだろ、そんなこと」
「うん、そう思う」
「あーあ……しかも何でこんな会いたくない時に会うのかね」
夕貴の視線を追いかける。
「へー、え? 阿佐子と同じやつ?」
「うんそう」
「でもそりゃすごい。日本に数台しかないはずだよ」
夕貴の声のトーンが突然場違いなほどに上がり、車が好きだったことを思い出す。
「そうなんだ……。けど私、乗りづらいから全然乗ってないけど」
「乗らないなら慣れないよ」
「それで、その、榊と3人で会った日、その車を運転したいがために免許とったって言われて。けど私、見ても分からなかったの。その車が自分と同じかどうかなんて。似てる気はしたけど、なんか、それよりも阿佐子が免許を取ったことの方に気がいってて……」
「それでその後の薬の自殺未遂に繋がるのか?」
「そう……。榊は、私がその車をもらったことに、腹がたってるみたいだったから車返した方がいいって。
それでね、車返そうと思って、相手と連絡とったんだけど、オリテル待ちなの。けど多分プレゼントした車のことなんてきっとお金持ちは忘れてるのよ」
突然、右腕を痛いほど掴まれたかと思うと、
「お前、絶対やめとけよ」
と、しっかり目を見て釘を刺される。
「だ、大丈夫。人としては普通の人なのよ。阿佐子が好きになったのも、分かるの」
「ええ!? 大丈夫なわけねーだろ!」
掴まれた腕が痛かったが、余計な心配をかけてはいけないと、ムキになって続けた。
「だって実際阿佐子には何もしなかったわ」
「現にこうじゃねーか」
「それは……だって、直接関係してないし」
「わかんねーぞ」
夕貴はようやく手を離すと、大きく溜息をついた。
「思えば、相手はそれほど阿佐子に興味を持っていたわけじゃなかった気がする。阿佐子の話の中でな。あいつは一々大袈裟に喜んでいたけど、なんというかあしらわれてる感じがしてた。どっちにしても、危ない奴は絶対にやめとけって何度も言ったんだ。そしたら、あんまり言わなくなったから、てっきり……」
「夕ちゃんがしつこく言うから嫌になったんだよ」
「仕方ねーだろ!? 普通だよ」
夕貴の普通に、私たちは助けられているのかもしれない。そう思うと、その怒りの横顔が急に微笑ましく思えた。
「大体の内容は分かった。他言しないよ。あいつも言わないだろ、そんなこと」
「うん、そう思う」
「あーあ……しかも何でこんな会いたくない時に会うのかね」
夕貴の視線を追いかける。