絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「いやあ、そんな話は聞いたことなかったけどね。たいてい自慢気に写真見せたりもするし……。けど最近は俺も全然そんな話しないから、てっきり彼女はいないと思ってた。なんかカメラの仕事とかしたいって言ってて、そっちに今はまってるもんだと思ってて……」
「ああ、いつものパソコンは写真だったんですか」
「多分ね」
「ああ……」
「何も分からない今は、とりあえず待ってればいいと思うよ」
「えー……あぁ……そんな……まさか、ユーリさんがそんなことに巻き込まれるなんて……」
「いや、まだ何も分からないから」
「……そうですよね……」
「うん……、大丈夫?」
「え、ああ、はい。もう全然気にしてなかっ……」
「あぁ」
 人気に気づいたのと、レイジが挨拶をしたので、すぐに後ろを振り返る。
「電話鳴ってたから」
 真籐が部屋から携帯を持って来てくれたのである。
「あ、ありがとう……」
 香月は中を確認した。
「知らない番号だ……」
「かけなおしてみたら?」
 レイジに促され、知らない携帯番号へと発信する。
 まさか、ユーリではあるはずがない。だって、自分の携帯は持って行ってるに決まってるから。
でも、もしかしたらこちらの番号を覚えていたのかもしれない。
『もしもし』
「もしもし、ユーさん!」
 全員の視線を必死に浴びながら、どうにか会話を先へと進める。
『ちょっとしばらく帰れんかもしれん』 
「ちょっと、どこで何してるのよ!」
『今ちょっと彼女の家におるんや。だから……』
「金曜日に仕事に来てた人?」
『え……いや、うん、まあ……』
「だったらどうしてもっと早く連絡くんないんですか! 仕事は?」
『ちょっと今は行けへん』
「何で? そこから行けばいいじゃないですか」
『いや……、今は行けへん……』
「行けない? 足あります?」
『うん足はあるけど……』
「手がない!?」
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