絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
手を合わせて、言いながらちらと男を見る。と、相手もこちらを見たので、慌てて目をそらした。
手持無沙汰になったので、もう一度冊子を広げる。
漢字のニュアンスでカタカナを想像するのは難しい。杏仁……くらいは分かっても、パフェ……とかゼリーは分からない。アイス……も微妙だな。この冷という漢字がついているのがそうだろうか?
ちら、と男を見る。すると、相手はまだこちらを見ていた。
「追加注文か?」
「えっ……でも字が読めなくて……」
「何がほしい」
男は仕方なさそうにパソコンから身を引く。香月は両手で冊子を持ち、丁寧に男に手渡した。
「えーと、デザート……」
「中国はさっきのケーキが主流だ」
「え、えーと、チ、チーズケーキとか……」
「チーズケーキはほとんど食わん」
「あっ、へえ……」
「チョコレートならある」
「あ、じゃあそれで……」
また目が合う。
「お願いします」
その一言が必要だったのだろう。
「よく食うな……」
嫌味か呆れか何なのか、彼はまた上手な中国語で注文をした。
映画などで見た場合、人質というのは、紐で縛られて監禁されているが、何故こんな野放しでシャワーを浴びさせたり、食事をさせるのだろう……。これが実際の人質なのだろうか?
「あの……」
なんとなく、男との距離が縮まった気がしたので、話しかけてみる。
「……」
まさかグラスの透明の液体はアルコールではないだろう、男は傾けながらこちらをちらとだけ見た。
「あなたは誰ですか?」
何度も考えたセリフ。これが多分一番分かりやすい。何と答えるだろう、興味があった。やくざが自分でやくざだと名乗るとは思えないし、まさか、一般サラリーマンではないだろうし。
「……」
無言で、胸ポケットから出してきたのは一枚の名刺。
手持無沙汰になったので、もう一度冊子を広げる。
漢字のニュアンスでカタカナを想像するのは難しい。杏仁……くらいは分かっても、パフェ……とかゼリーは分からない。アイス……も微妙だな。この冷という漢字がついているのがそうだろうか?
ちら、と男を見る。すると、相手はまだこちらを見ていた。
「追加注文か?」
「えっ……でも字が読めなくて……」
「何がほしい」
男は仕方なさそうにパソコンから身を引く。香月は両手で冊子を持ち、丁寧に男に手渡した。
「えーと、デザート……」
「中国はさっきのケーキが主流だ」
「え、えーと、チ、チーズケーキとか……」
「チーズケーキはほとんど食わん」
「あっ、へえ……」
「チョコレートならある」
「あ、じゃあそれで……」
また目が合う。
「お願いします」
その一言が必要だったのだろう。
「よく食うな……」
嫌味か呆れか何なのか、彼はまた上手な中国語で注文をした。
映画などで見た場合、人質というのは、紐で縛られて監禁されているが、何故こんな野放しでシャワーを浴びさせたり、食事をさせるのだろう……。これが実際の人質なのだろうか?
「あの……」
なんとなく、男との距離が縮まった気がしたので、話しかけてみる。
「……」
まさかグラスの透明の液体はアルコールではないだろう、男は傾けながらこちらをちらとだけ見た。
「あなたは誰ですか?」
何度も考えたセリフ。これが多分一番分かりやすい。何と答えるだろう、興味があった。やくざが自分でやくざだと名乗るとは思えないし、まさか、一般サラリーマンではないだろうし。
「……」
無言で、胸ポケットから出してきたのは一枚の名刺。