絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
一旦区切り、店員に告げた餡かけ鳥から揚げが二つ運ばれてくるまでしばし待つ。
「美味しそう♪」
テーブルに並ぶなり香月は目の前の皿を見てにこっと笑う。あぁ、来て良かったな、と思う瞬間であった。
「ちなみに」
食べながら重くならないように気楽に尋ねる。
「香月って独身だよな。いまさらだけど」
「何がいまさらなんですか(笑)」
「いや独身だからまあいいかと思って来たわけだけど、そういえば結婚してたらこの状況はまずいのかなと思いなおして」
「大丈夫ですよ、私は独身です。結婚してたら2人きりでなんて絶対行きませんよ」
「お、堅いな」
「当然です」
香月は大人びた返事をする。
「香西副店長も独身なんですよね」
「うんそう。彼女なし」
「彼女という人がいないという意味ですか?」
「何それ」
「いや、香西副店長はなんかモテそうだから」
「だから?」
「だからこう、色々……僕には彼女なんていないんだけどね、みたいな」
「それで色々遊んでる、と」
「……そうとは言いませんけど……、そうではないんですけど……すみません」
香月は、言葉を濁して頭を下げた。
「いいよ謝らなくて(笑)。まあ、この年になって独身でいて、遊んでないといえば嘘になるけど」
「いえ、すみません、言い方が悪かったんです」
真剣に謝るので、笑ってしまった。
「いいよ、いいよ(笑)。まあ、彼女なんていませんよねー絶対、というか作れませんよねー、と言われるよりは、はるかにマシだ」
「そりゃあもう、香西副店長は素敵です」
「香月に言われるとは光栄だな」
そこで一旦会話は途切れるが、もう一度盛り返すことにする。
「香月は彼氏いないの?」
「いません」
「……それは言えないって意味?」
「え? 言えない? 言えなくないですよ、いないです」
「だってさっき、宮下店長のこと、彼とか言ってたのがちらっと聞こえて……」
「え、そんなの言いましたっけ? 彼……」
「美味しそう♪」
テーブルに並ぶなり香月は目の前の皿を見てにこっと笑う。あぁ、来て良かったな、と思う瞬間であった。
「ちなみに」
食べながら重くならないように気楽に尋ねる。
「香月って独身だよな。いまさらだけど」
「何がいまさらなんですか(笑)」
「いや独身だからまあいいかと思って来たわけだけど、そういえば結婚してたらこの状況はまずいのかなと思いなおして」
「大丈夫ですよ、私は独身です。結婚してたら2人きりでなんて絶対行きませんよ」
「お、堅いな」
「当然です」
香月は大人びた返事をする。
「香西副店長も独身なんですよね」
「うんそう。彼女なし」
「彼女という人がいないという意味ですか?」
「何それ」
「いや、香西副店長はなんかモテそうだから」
「だから?」
「だからこう、色々……僕には彼女なんていないんだけどね、みたいな」
「それで色々遊んでる、と」
「……そうとは言いませんけど……、そうではないんですけど……すみません」
香月は、言葉を濁して頭を下げた。
「いいよ謝らなくて(笑)。まあ、この年になって独身でいて、遊んでないといえば嘘になるけど」
「いえ、すみません、言い方が悪かったんです」
真剣に謝るので、笑ってしまった。
「いいよ、いいよ(笑)。まあ、彼女なんていませんよねー絶対、というか作れませんよねー、と言われるよりは、はるかにマシだ」
「そりゃあもう、香西副店長は素敵です」
「香月に言われるとは光栄だな」
そこで一旦会話は途切れるが、もう一度盛り返すことにする。
「香月は彼氏いないの?」
「いません」
「……それは言えないって意味?」
「え? 言えない? 言えなくないですよ、いないです」
「だってさっき、宮下店長のこと、彼とか言ってたのがちらっと聞こえて……」
「え、そんなの言いましたっけ? 彼……」