絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「はい」
「してないよ(笑)、なんで?」
「そういう噂です」
「どんな噂なんだか……。してない。そういうのに興味はないし、見合いするくらいなら結婚なんてしないよ」
「でも、副社長の奥さまが時々お世話をするって聞いたことありますけど」
「あぁ、確かに。まあ、詳しく言えば言われたのは言われたよ。俺は誰にも言ってないけど」
「でも、しなかったんですか?」
「今はそんな気になれないな……。長く独身でいるからそんな噂が出たのかな……」
「そっか、良かった……」
香月は、ほっとしたように、背を椅子にもたせて息を吐いた。
……良かった、とは……。
「良かったって?」
軽く、聞いた。
「昨日、ちらっとその話を聞いて、なんかショックだったんですよね」
「……なんで?」
聞いていいものか迷いながら、聞く。
「だって宮下店長っていつも独身貴族みたいにこう、自由というかなんというか、そういうところ、憧れだったので」
そゆこと……。
「……そういう意味では、香月だって立派な独身貴族じゃないか」
「そんな私なんて庶民ですよ、ただの。だけど宮下店長は仕事もできるし、お金もあるし、時間はあんまりないかもしれないけど……」
「確かに時間はないな」
「でもまあ、そういうところがずっと素敵だと思っていたので、なんかちょっとショックだったんですよね」
「どんなショックなんだよ(笑)。結婚はしないよ、当分」
「けど、いつか、素敵な人がいたらやっぱりしますか?」
「どうだろうなあ……」
ようやく弁当に箸を戻すことができる。
「どうかな……」
「結婚願望とかないんですか?」
「ないこともないけど……結婚して、子供ができて……仕事を両立させる。自分が成長するだろうけどな……。うん、やっぱり相手がいないからしないんだろうな」
「どんな人が好みなんですか?」
香月の質問は容赦ないが、悪い気はしない。
「そうだな……。どんな人……。普通の人」
「それが一番難しいですよねー」
「そう、なかなか普通の人っていない」
「だってこの中に200人も人がいても、なかなか普通の人っていませんもんね」
「そうだなぁ……」
そういう意味では香月も普通の人ではない。その知名度と容姿は抜群の証でもある。
「してないよ(笑)、なんで?」
「そういう噂です」
「どんな噂なんだか……。してない。そういうのに興味はないし、見合いするくらいなら結婚なんてしないよ」
「でも、副社長の奥さまが時々お世話をするって聞いたことありますけど」
「あぁ、確かに。まあ、詳しく言えば言われたのは言われたよ。俺は誰にも言ってないけど」
「でも、しなかったんですか?」
「今はそんな気になれないな……。長く独身でいるからそんな噂が出たのかな……」
「そっか、良かった……」
香月は、ほっとしたように、背を椅子にもたせて息を吐いた。
……良かった、とは……。
「良かったって?」
軽く、聞いた。
「昨日、ちらっとその話を聞いて、なんかショックだったんですよね」
「……なんで?」
聞いていいものか迷いながら、聞く。
「だって宮下店長っていつも独身貴族みたいにこう、自由というかなんというか、そういうところ、憧れだったので」
そゆこと……。
「……そういう意味では、香月だって立派な独身貴族じゃないか」
「そんな私なんて庶民ですよ、ただの。だけど宮下店長は仕事もできるし、お金もあるし、時間はあんまりないかもしれないけど……」
「確かに時間はないな」
「でもまあ、そういうところがずっと素敵だと思っていたので、なんかちょっとショックだったんですよね」
「どんなショックなんだよ(笑)。結婚はしないよ、当分」
「けど、いつか、素敵な人がいたらやっぱりしますか?」
「どうだろうなあ……」
ようやく弁当に箸を戻すことができる。
「どうかな……」
「結婚願望とかないんですか?」
「ないこともないけど……結婚して、子供ができて……仕事を両立させる。自分が成長するだろうけどな……。うん、やっぱり相手がいないからしないんだろうな」
「どんな人が好みなんですか?」
香月の質問は容赦ないが、悪い気はしない。
「そうだな……。どんな人……。普通の人」
「それが一番難しいですよねー」
「そう、なかなか普通の人っていない」
「だってこの中に200人も人がいても、なかなか普通の人っていませんもんね」
「そうだなぁ……」
そういう意味では香月も普通の人ではない。その知名度と容姿は抜群の証でもある。