絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「香月はどんな人がいいんだ?」
 仕返しのつもりで聞く。
「え? あぁ、そう……もうバレましたよね、この前の」
「え?」
「あ、忘れてましたか?」
「えーと……」
 目を合わせて考えるふりをして、まじまじとその顔を眺める。
「えーと……」
「あの、総会に来てた人」
「あぁ! あのえーと、イギリスの医者?」
「そう。あの人、結婚してたんです。ずっと、だけど別れたから、いいかなと思って、この前イギリスに遊びに行ったんです」
 ……。
「……彼は再婚してくれそうな感じ?」
「ううん、そういうんじゃないです。私も結構冷静なんですよ。なんというか、今ちょっとそういう気分なだけなんです」
「癒してくれるとか……」
「うーん、そうではない。そうじゃなくて、昔の恋愛……結婚する前に私とその人は付き合ってたんですけどね、その昔の恋愛をこうただ、引きずってるだけというか……」
「いい男は他にもいるぞ」
 本音で言った。
「私、見る目ないんですよ、きっと」
「だろうな……」
「なんか実際そういわれるとショックですよね(笑)」
「いやまあ、なんというか、実感してるから(笑)」
「ですよねー」
「……」
 香月はようやくサンドイッチの封を開けて、ジュースを飲む。宮下はその間ずっと考えて、そしてようやく口にした。
「香月、今日帰り、食事でも行くか?」
「すみません、今日は家族と食事する約束にしてますから……、明日なら」
「明日は、俺休みだから……」
「そうですか……。皆でどこか食事に行きたいですね」
「そうだな……」
 こちらの気持ちに一瞬気づかれたかと思ったが、彼女はさらりとしていて。
 
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