絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「え。あ、それもそうですね。私地図が読めないので……」
その方が助かります、という一言は言いすぎだと思ったのでやめた。しかも、そこは何度も行ったことがあるので場所がちゃんと分かっている。
「じゃあそれで。ヤバ、休憩時間過ぎた(笑)」
彼は腕時計を見ながら笑顔でスタッフルームから出て行く。迫力と勢いのある美人の若者だった。自分より若い人と2人きりで食事に行く機会もない香月は、缶コーラを手にとりながら思い始める。
「……」
食事って……どうしても2人きりでだろうか……。
それだったらちょっと困ったな、ただのお礼で普通そこまでするはずがないし、何かの誘いであれば断った方が良かったはずだ。
「単なる馬鹿ってことだ」
巽のセリフが思い出される。
本当に空気が読めていないのなら、自分は単なる馬鹿だと思った。
しかし、落ち込んでいるわけにはいかない。嫌なら人数を増やせばいいだけのことである。そうか、もしくは最初から2人きりじゃないかもしれないし。とにかくそれを確認するために、もう一度寺山と接触を試みたかったのだが、結局夕方の休憩も一緒にとれず、夜まで姿を見かけることもなかった。
参ったな……いまさら断りにくい。
とにかくパスタを食べていればそのうち終わるか……いやしかし、同じ車で行くとなるとかなり濃い時間になる……。
閉店後、レジで清算作業を進めながらあれこれ考えていると、横から香西が、何の前後もなく
「香月、今日飯行くか?」
「……」
香西に誘われて断れなかったことにしようか……、そんな理由通じるだろうか……。
「香月さん」
香西への返事を待たずに、背後から別の声が聞こえる。声の主は分かっている。だが、なかなかそちらを向けなかった。
「……はい」
「俺、先出て車こっち寄せとくから。白のチェイサー」
「あ、はい」
寺山はそれだけ言うと、香西に「お疲れ様でした」と堂々と言い放って離れた。
「デート?」
すぐに香西は聞く。
「違いますよ、昨日の仕事のお礼です」
とにかく自分にそう言い聞かせる。
「なんだ、先客有りか……」
その方が助かります、という一言は言いすぎだと思ったのでやめた。しかも、そこは何度も行ったことがあるので場所がちゃんと分かっている。
「じゃあそれで。ヤバ、休憩時間過ぎた(笑)」
彼は腕時計を見ながら笑顔でスタッフルームから出て行く。迫力と勢いのある美人の若者だった。自分より若い人と2人きりで食事に行く機会もない香月は、缶コーラを手にとりながら思い始める。
「……」
食事って……どうしても2人きりでだろうか……。
それだったらちょっと困ったな、ただのお礼で普通そこまでするはずがないし、何かの誘いであれば断った方が良かったはずだ。
「単なる馬鹿ってことだ」
巽のセリフが思い出される。
本当に空気が読めていないのなら、自分は単なる馬鹿だと思った。
しかし、落ち込んでいるわけにはいかない。嫌なら人数を増やせばいいだけのことである。そうか、もしくは最初から2人きりじゃないかもしれないし。とにかくそれを確認するために、もう一度寺山と接触を試みたかったのだが、結局夕方の休憩も一緒にとれず、夜まで姿を見かけることもなかった。
参ったな……いまさら断りにくい。
とにかくパスタを食べていればそのうち終わるか……いやしかし、同じ車で行くとなるとかなり濃い時間になる……。
閉店後、レジで清算作業を進めながらあれこれ考えていると、横から香西が、何の前後もなく
「香月、今日飯行くか?」
「……」
香西に誘われて断れなかったことにしようか……、そんな理由通じるだろうか……。
「香月さん」
香西への返事を待たずに、背後から別の声が聞こえる。声の主は分かっている。だが、なかなかそちらを向けなかった。
「……はい」
「俺、先出て車こっち寄せとくから。白のチェイサー」
「あ、はい」
寺山はそれだけ言うと、香西に「お疲れ様でした」と堂々と言い放って離れた。
「デート?」
すぐに香西は聞く。
「違いますよ、昨日の仕事のお礼です」
とにかく自分にそう言い聞かせる。
「なんだ、先客有りか……」