絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「えーと、そのくらいかな……じゃぁまあとりあえず、そんな感じで……」
 真籐が帰るタイミングを香月は見事に計った。
「そうですね、ではそろそろ。また明日来ます」
「はい」
 香月とユーリは笑顔で彼を見送る。
 彼もまた、笑顔で玄関の向こうに消えた。
「どう?」
 香月は、さっそくユーリに感想を聞いてみる。
「いやー、イケメンやね」
「でしょー? でも私は世界中の皆が真籐さんのことをイケメンだと言っても、この私だけはユーリさんの方がイケメンだって言うからね」
「それ、どんな慰め?」
「事実です」
「それにしても、まさか、この3人で暮らすようになるとはなあ……」
「嫌だった?」
 香月は少し不安そうに聞いたが、ユーリはどうでもよさそうに、
「あ、家賃の話するん忘れた。それが一番大事よ」
 ユーリは一人呟きながら自室に入る。香月はというと、とりあえずコーヒーカップを片付けながら、真籐のことをぼんやり考えていた。
 年下の美人。と、一つ屋根の下。
「ないな……」
 なのになぜユーリだと一緒にいたいのか。答えは簡単。意識しなくていいから。美人だと意識をする。まあ、仕方のないことだ。
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