絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
彼はすぐに的に向かって右手を差し出し構えると、引き金を引いた。
大きな音と火薬の匂いで一瞬目をつぶる。
その音は2度続いた。
「と、いう感じです」
言われて、よくよく的を見ると真ん中の赤い丸の中にもう一つ黒い小さな丸があるのだが、そこに2発とも命中しているようだった。
「うわあ! すごい!」
彼は無言でにっこり微笑む。
「うわあ……すごいです……」
興奮を抑えてもう一度感想を述べる。
「どうぞ、やってみてください。よく見れば大丈夫です」
「できるかな……」
香月は彼に手渡されたガンを、まず握る。
「ええと…」
「そうです。持ち方は合っていますよ、そして、右腕をまっすぐ伸ばして、体を傾けて……そう。それで、引き金を引いてください」
「……はい」
ところが、引き金が重くてなかなか引けない。
「(笑)、ダメですか?」
「か、硬くて……両手じゃないと……」
指に力を入れると、的を狙っていたはずの腕が少し下がってしまう。
「それでは的に当たりません。いいですか……」
彼は背後に回りこむと香月の腕をその位置まで上げて、人差し指の下に自らの人差し指を滑り込ませてくる。
「見ていてください。ここからまっすぐ、あの黒い丸に向かって強く引く」
大きな音に目を閉じる。その瞬間に、弾は弾かれ、的に当たっていた。
「少しずれましたね(笑)」
よく見ると、黒ではなくその一回り大きな赤い丸に銃痕がある。
「あぁ、ほんと……でも、硬くてびっくりしました……」
「筋肉トレーニングの問題ですね」
「もう一度だけ、自分でやってみてもいいですか?」
「どうぞ、弾はあと3発あります」
彼は無意識に数えているのだろう。そんな気がした。
「ええと……こう……」
独り言を呟きながら、まっすぐに的をとらえ、引き金を引く。
「……」
とりあえずどうにか打つことは打てたが、的を狙うどころか、目を開いて見てみても、弾がどこに行ったのか全く分からない。
「(笑)、できなくて当然です。せっかくだから的も動かしてみましょう」
「え、的が動くんですか?」
「ええ」
彼は側にあったボタンを軽く押す。するとすぐに的が左右に30センチほど動き始めた。
「見ていてください」
彼は自信たっぷりに挑発すると、その視線を誘った。
もう少し時間がかかると思った。
何にって、精神統一とか、色々。
だが彼はすぐに放つ。しかも、3発。身のこなしは緩やかだが、表情だけは真剣だった。
「えー……うわー、全然的が見えません……」
「目が慣れていないだけですよ」
大きな音と火薬の匂いで一瞬目をつぶる。
その音は2度続いた。
「と、いう感じです」
言われて、よくよく的を見ると真ん中の赤い丸の中にもう一つ黒い小さな丸があるのだが、そこに2発とも命中しているようだった。
「うわあ! すごい!」
彼は無言でにっこり微笑む。
「うわあ……すごいです……」
興奮を抑えてもう一度感想を述べる。
「どうぞ、やってみてください。よく見れば大丈夫です」
「できるかな……」
香月は彼に手渡されたガンを、まず握る。
「ええと…」
「そうです。持ち方は合っていますよ、そして、右腕をまっすぐ伸ばして、体を傾けて……そう。それで、引き金を引いてください」
「……はい」
ところが、引き金が重くてなかなか引けない。
「(笑)、ダメですか?」
「か、硬くて……両手じゃないと……」
指に力を入れると、的を狙っていたはずの腕が少し下がってしまう。
「それでは的に当たりません。いいですか……」
彼は背後に回りこむと香月の腕をその位置まで上げて、人差し指の下に自らの人差し指を滑り込ませてくる。
「見ていてください。ここからまっすぐ、あの黒い丸に向かって強く引く」
大きな音に目を閉じる。その瞬間に、弾は弾かれ、的に当たっていた。
「少しずれましたね(笑)」
よく見ると、黒ではなくその一回り大きな赤い丸に銃痕がある。
「あぁ、ほんと……でも、硬くてびっくりしました……」
「筋肉トレーニングの問題ですね」
「もう一度だけ、自分でやってみてもいいですか?」
「どうぞ、弾はあと3発あります」
彼は無意識に数えているのだろう。そんな気がした。
「ええと……こう……」
独り言を呟きながら、まっすぐに的をとらえ、引き金を引く。
「……」
とりあえずどうにか打つことは打てたが、的を狙うどころか、目を開いて見てみても、弾がどこに行ったのか全く分からない。
「(笑)、できなくて当然です。せっかくだから的も動かしてみましょう」
「え、的が動くんですか?」
「ええ」
彼は側にあったボタンを軽く押す。するとすぐに的が左右に30センチほど動き始めた。
「見ていてください」
彼は自信たっぷりに挑発すると、その視線を誘った。
もう少し時間がかかると思った。
何にって、精神統一とか、色々。
だが彼はすぐに放つ。しかも、3発。身のこなしは緩やかだが、表情だけは真剣だった。
「えー……うわー、全然的が見えません……」
「目が慣れていないだけですよ」