絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「あ、はい。そうなんです。……あの、本当に私、色々考えたんです。多分、私が誰かに言ってしまったら、黙っておくわけにはいかないような、そんな話だと思ったから……実際には3ヶ月くらい、黙っていました」
「……うん。いいよ、最初から詳しく話して」
「誰にも言わないって約束してもらえませんか?」
香月は真剣に宮下を見る。
だが彼は麦茶に口をつけると、
「それはできない」
と、素早く否定した。
「……できませんか……」
「プライベートな話じゃないなら、それなりに聞いた責任があると思っている」
「……私が言ったということは、誰にも言わないでください」
「その約束は守ろう」
「……」
大きく息を吐き、また、吸う。
「……迷ってるのか? 言おうかどうか」
迷い? 迷えば迷うほど苦しいだけ……。
「いえ……今日は言って帰ります。でないと、私、また明日から……。
自分の身を守るために、人を売るのかもしれない。だけど、私にも、限界があるんです」
「正当防衛ということもある得る。誰が悪いのか、それは、悪い本人が一番よく分かっていると思うよ」
睨むように真剣に見つめる香月を、なだめるような一言。
だが香月は突然表情を崩した。
「……もしかして……知ってるんですか?」
「何を?」
「……私が今から言うことを……」
「(笑)、何? 言ってからじゃないと分からないよ(笑)」
宮下が場違いなほどに明るい笑顔を向けると、香月の緊張も一時ほぐれ、
「そう……ですよね……」
「うん、まあ、言ってみて? それから考えよう。悩みなら相談に乗る」
宮下はまた笑ってソファにどかりと背を預け、足を組んでこちらを見た。
「……はい……」
「……」
香月は少し視線を落とし、麦茶を眺める。
そして、少し息を吸い込んで、大きく吐き出した。
「3ヶ月くらい前、5月です。私、玉越さんがクレジットカードの申込をいくつか獲得しているのを見ました。だけどその数が接客している数との割合を考えると多いんです。他の人ももしかしたら気づいていたのかもしれない。
けど、そのことを本人に聞いても、今日はたまたま当たりが良かった、とかそんな感じで……。
申し込みがあれば当然一件につき、中田さんが持ってきたギフト券のうちの1万円がお客さんに手渡されているわけです。
……かといって、本人の様子が変わったわけでもないし。でも件数が多いし。誰も何も言わないし……。だから私も多分、何かの勘違いだと思って、知らないふりをしました」
香月はそこで一旦区切る。
「知っていましたか?」
「……うん。いいよ、最初から詳しく話して」
「誰にも言わないって約束してもらえませんか?」
香月は真剣に宮下を見る。
だが彼は麦茶に口をつけると、
「それはできない」
と、素早く否定した。
「……できませんか……」
「プライベートな話じゃないなら、それなりに聞いた責任があると思っている」
「……私が言ったということは、誰にも言わないでください」
「その約束は守ろう」
「……」
大きく息を吐き、また、吸う。
「……迷ってるのか? 言おうかどうか」
迷い? 迷えば迷うほど苦しいだけ……。
「いえ……今日は言って帰ります。でないと、私、また明日から……。
自分の身を守るために、人を売るのかもしれない。だけど、私にも、限界があるんです」
「正当防衛ということもある得る。誰が悪いのか、それは、悪い本人が一番よく分かっていると思うよ」
睨むように真剣に見つめる香月を、なだめるような一言。
だが香月は突然表情を崩した。
「……もしかして……知ってるんですか?」
「何を?」
「……私が今から言うことを……」
「(笑)、何? 言ってからじゃないと分からないよ(笑)」
宮下が場違いなほどに明るい笑顔を向けると、香月の緊張も一時ほぐれ、
「そう……ですよね……」
「うん、まあ、言ってみて? それから考えよう。悩みなら相談に乗る」
宮下はまた笑ってソファにどかりと背を預け、足を組んでこちらを見た。
「……はい……」
「……」
香月は少し視線を落とし、麦茶を眺める。
そして、少し息を吸い込んで、大きく吐き出した。
「3ヶ月くらい前、5月です。私、玉越さんがクレジットカードの申込をいくつか獲得しているのを見ました。だけどその数が接客している数との割合を考えると多いんです。他の人ももしかしたら気づいていたのかもしれない。
けど、そのことを本人に聞いても、今日はたまたま当たりが良かった、とかそんな感じで……。
申し込みがあれば当然一件につき、中田さんが持ってきたギフト券のうちの1万円がお客さんに手渡されているわけです。
……かといって、本人の様子が変わったわけでもないし。でも件数が多いし。誰も何も言わないし……。だから私も多分、何かの勘違いだと思って、知らないふりをしました」
香月はそこで一旦区切る。
「知っていましたか?」