絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
「えー……うわー……私……」
香月は大きくショックを受けたのだろう。ソファに背をもたせ、俯いて左手で顔を半分隠した。
「玉越のことが知れたら首になると思って黙っていたのか?」
「……江角さんが、報告したら横領ってことになるかもしれないって……思って……」
「そうだな……」
香月の声は続かない。
ただ、左手の下で、涙が流れていることは分かる。
「辛かったな……」
「一度……宮下店長に言うチャンスがありました……。あの、倉庫で見られた時……あの時、すごく迷いました……」
「ああ、あのときは変だと思ったけど……香月が何でもないって言い張るから……」
「江角さんが出社してるときは……本当はあんなことばっかりで……宮下店長に見られた時、少しほっとしました……」
「……そうか」
鼻声と荒い吐息が心を打つ。
宮下は少し前に寄って、右手を伸ばした。
「江角のことはどうする?」
優しく頭を撫でてやる。
「……どうって……」
「そのことを本社に報告して、辞めさせてもいい」
「何か、他の理由にしてください」
「普段は普通の奴だからな、移動くらいが精一杯だろうがそれでもいいか?」
「……とりあえずはそれでいいです」
「とりあえずと言っても、時間がたてば、辞めさせるのは難しいぞ」
「誰か他の人にそんなことを知られるよりは、マシです」
「……香月がそれでいいんならいいが……」
「……私、こんなことばっかりですよね……なにがいけないんだろう……」
「……何も悪くないさ……」
迷わなかった。何も。
宮下は左手を伸ばし、その柔らかな肩を横から優しく抱く。
「え……」
香月の体が固まるのが分かる。
「ただ、守ってやる奴が必要なんじゃないかとはよく思う」
「え……」
後戻りはしない。そう決めて、更に腕に力を込める。
「宮、下……」
「毎度毎度……そんな相談ばっかり……」
「……す……みません……」
その謝罪が愛おしくて、更に力を込める。
「痛い……です」
香月は大きくショックを受けたのだろう。ソファに背をもたせ、俯いて左手で顔を半分隠した。
「玉越のことが知れたら首になると思って黙っていたのか?」
「……江角さんが、報告したら横領ってことになるかもしれないって……思って……」
「そうだな……」
香月の声は続かない。
ただ、左手の下で、涙が流れていることは分かる。
「辛かったな……」
「一度……宮下店長に言うチャンスがありました……。あの、倉庫で見られた時……あの時、すごく迷いました……」
「ああ、あのときは変だと思ったけど……香月が何でもないって言い張るから……」
「江角さんが出社してるときは……本当はあんなことばっかりで……宮下店長に見られた時、少しほっとしました……」
「……そうか」
鼻声と荒い吐息が心を打つ。
宮下は少し前に寄って、右手を伸ばした。
「江角のことはどうする?」
優しく頭を撫でてやる。
「……どうって……」
「そのことを本社に報告して、辞めさせてもいい」
「何か、他の理由にしてください」
「普段は普通の奴だからな、移動くらいが精一杯だろうがそれでもいいか?」
「……とりあえずはそれでいいです」
「とりあえずと言っても、時間がたてば、辞めさせるのは難しいぞ」
「誰か他の人にそんなことを知られるよりは、マシです」
「……香月がそれでいいんならいいが……」
「……私、こんなことばっかりですよね……なにがいけないんだろう……」
「……何も悪くないさ……」
迷わなかった。何も。
宮下は左手を伸ばし、その柔らかな肩を横から優しく抱く。
「え……」
香月の体が固まるのが分かる。
「ただ、守ってやる奴が必要なんじゃないかとはよく思う」
「え……」
後戻りはしない。そう決めて、更に腕に力を込める。
「宮、下……」
「毎度毎度……そんな相談ばっかり……」
「……す……みません……」
その謝罪が愛おしくて、更に力を込める。
「痛い……です」