絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
彼女は大きな瞳をまん丸に開いたかと思うと、すぐに手元に視線を落とす。
「悪い、こんなタイミングで。言うつもりもなかったんだけどな……。もうあんまり色々なことが起こるから。それならちゃんと、自分の手で守って解決したいと思ったんだ」
「え……そんな……」
香月はえらく困惑した表情を見せたな、と思ったら、口を結んで黙ってしまう。
「……びっくりした?」
何か話しかけてやらないと、可哀想なくらい戸惑っていた。
「はい。だってそんな……宮下店長はそんな人だとは思っていませんでした……」
「え、何が?」
「何がってなんか……女の人とかあんまり興味なさそうだったし……」
「そんなことないよ(笑)。それは香月が知らないだけ」
「それは……そうかもしれませんけど……。だって……だって……」
「だって何?」
少し怒っているのか、彼女は俯いて唇をかんでいる。
「だってそんな……好きだとか……」
「ああ。まあ、好きだと自覚したのは最近だけど、綺麗な子だとはずっと思っていたよ」
「……えー……」
何が嫌なのか、彼女はそのままの格好で不満の声を漏らした。
「入社式から思っていたよ、ああ、あんな綺麗な子がレジでいたら……まあ、レジでいたらいいなとはあんまり思わなかったけど、まあ、目につくだろうなって感じで。で、月島に行って、佐藤店長とのことがあって……」
「あぁ……そうでしたね……」
「東都で一緒になって、度々問題を吹っかけてきて」
「すみません……」
「いや、それがきっかけだったとは思うよ」
「……相談しなければ良かったですね……」
「いや、そうじゃない。相談してくれて、それはそれでよかったよ」
香月はまた、黙り込んでしまう。
「…………もうなんか、突然で……」
「まあ、江角のことは任せろ。移動させよう。それから、玉越はしばらくこのままだろうが、大下さんが独立するって噂があってな、大下さんが本当にいなくなったら、玉越も、どうだかな……」
「そう、なんですか……」
「まあ、噂の話だけで推測するのもあれだけど」
「……そうですね……」
「まあ、そういうことだ」
「……はい」
宮下は立ち上がると、キッチンに向かい、冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。
「香月、飲む?」
「えっ、いえ、いや、もう私は帰ります!」
「あ、そう?」
「え、あ、はい。とりあえず、江角さんのことも解決したような、感じなので……」
「ああ、まあな」
「悪い、こんなタイミングで。言うつもりもなかったんだけどな……。もうあんまり色々なことが起こるから。それならちゃんと、自分の手で守って解決したいと思ったんだ」
「え……そんな……」
香月はえらく困惑した表情を見せたな、と思ったら、口を結んで黙ってしまう。
「……びっくりした?」
何か話しかけてやらないと、可哀想なくらい戸惑っていた。
「はい。だってそんな……宮下店長はそんな人だとは思っていませんでした……」
「え、何が?」
「何がってなんか……女の人とかあんまり興味なさそうだったし……」
「そんなことないよ(笑)。それは香月が知らないだけ」
「それは……そうかもしれませんけど……。だって……だって……」
「だって何?」
少し怒っているのか、彼女は俯いて唇をかんでいる。
「だってそんな……好きだとか……」
「ああ。まあ、好きだと自覚したのは最近だけど、綺麗な子だとはずっと思っていたよ」
「……えー……」
何が嫌なのか、彼女はそのままの格好で不満の声を漏らした。
「入社式から思っていたよ、ああ、あんな綺麗な子がレジでいたら……まあ、レジでいたらいいなとはあんまり思わなかったけど、まあ、目につくだろうなって感じで。で、月島に行って、佐藤店長とのことがあって……」
「あぁ……そうでしたね……」
「東都で一緒になって、度々問題を吹っかけてきて」
「すみません……」
「いや、それがきっかけだったとは思うよ」
「……相談しなければ良かったですね……」
「いや、そうじゃない。相談してくれて、それはそれでよかったよ」
香月はまた、黙り込んでしまう。
「…………もうなんか、突然で……」
「まあ、江角のことは任せろ。移動させよう。それから、玉越はしばらくこのままだろうが、大下さんが独立するって噂があってな、大下さんが本当にいなくなったら、玉越も、どうだかな……」
「そう、なんですか……」
「まあ、噂の話だけで推測するのもあれだけど」
「……そうですね……」
「まあ、そういうことだ」
「……はい」
宮下は立ち上がると、キッチンに向かい、冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。
「香月、飲む?」
「えっ、いえ、いや、もう私は帰ります!」
「あ、そう?」
「え、あ、はい。とりあえず、江角さんのことも解決したような、感じなので……」
「ああ、まあな」