夢の途中
―――芹沢…?
聞き間違いでなければ、確かにお妙さんはそう言った。男を見れば、がっちりした体型で背も高く、手には鉄扇を持っていた。急に心臓の鼓動が早くなる。お妙は立ち上がって、少し様子のおかしい惠瑠を見て首を傾げる。
「芹沢…鴨…」
「あ?」
惠瑠は思わず口に出してしまった。信じられない。
――どうしよう康ちゃん。
更に鼓動が早まる。
今、目の前に芹沢鴨がいるよ。
急な展開すぎて頭がついていかない。この時代にきてから色々ありすぎる。だって、こうやって目の前に芹沢鴨がいるんだから。
――芹沢はな、嫌っていた奴もたくさんいたけど、人望は厚かったんだ。
――康ちゃん芹沢っていう人と知り合いなの?
――バカ、んな訳あるかよ。
――じゃあなんでそんな事がわかるのさ。
――さあな、でも俺好きなんだよ。芹沢鴨が。
前に康ちゃんとそんなことを話していた覚えがある。その時特徴も教えてくれたっけ。
「…お前俺を知ってんのか?」
「うん、知ってる」
知ってるさ。だって私は未来から来たんだから。
芹沢は惠瑠を見てまた笑う。面白い小娘だと。自分のことを真っ直ぐとした揺るがない瞳で見ているのだから。