夢の途中
芹沢は一体この娘は何を言い出すんだと眉を寄せた。
こんなちっこくて、華奢で、ましてや女子(おなご)がいきなり新撰組に連れていって欲しいなどと言うなんて思いもしなかった。それに、惠瑠と会ってものの数分。
確かに芹沢は惠瑠を少なからず気に入った。強気だし、自分を怖がらず真っ直ぐとした目を向けてくる。今どき珍しい小娘だとも思った。見た目も変わっている。
しかし、それとこれとは話が別だ。そんな簡単に言えるほど、甘っちょろい処じゃない。
「そいつは、無理な願い事だなあ」
「…なんで?私が女だから?」
惠瑠は気にくわない返答なのか、顔をしかめる。
「それもあるが、…お前ぇ人斬ったことあんのか?」
「……」
「ねーよなあ。お前の目は綺麗なもんしか映してねーような目しかしてねーんだよ」
お前には無理だ、そう目で言っている。
惠瑠はキュッと口を結んだ。
確かに人を斬ったことはないし、斬りたいとも思ったことがない。自分が無茶苦茶なことを言っているのは百も承知だ。
「…でも、私は貴方たちが持っている強さと志をこの目で見てみたい。私の国では争い事もないし、ましてや戦争なんて存在しない。この国とは違って平和なんだ」
「…戦争がねーのか?お前の国には」
「そう、だから私は人なんて斬ったことない。貴方たちから見たらツマラナイ所かもしれないけど、それはそれで良い所だよ。確かに私は女だし、武士でもない。でもこの国で、行きたい、っていう気持ちは誰にも負けない」
負けないさ
自分が見つかるまで
芹沢はしばらく腕を組んで考える。重そうな鉄扇をパチ、パチ、と鳴らす。
―――すると、いきなり鉄扇を惠瑠に向かって投げた。
「!」
驚いたが、とっさに腕をだして受け止める。ずっしりとした重みが腕にかかる。しかし、意外にも惠瑠は余裕に鉄扇をもつ。
それを見て芹沢は驚いた。