夢の途中
さすがに、この発言には芹沢も驚きを隠せなかった。何せ、沖田総司は剣の天才だ。そんな奴に勝てるはずがないだろう。
――何考えていやがる、この女。
近藤も胸のざわつきを覚えるが、惠瑠に視線を合わせる。
「君は…、何を言っているのかわかってるのかい?総司はとにかく強い。それに相手が男だろうが女だろうが手加減はしない」
「ははは、寧ろ大歓迎だよ。手加減なんかするような奴がいたら…、叩きのめしたくなるね」
惠瑠の目は本気だ。笑っているが瞳の奥底は鋭い。その瞳に少なからず鳥肌がたつ。
少し黙って惠瑠を見ていた芹沢が近藤を諭すように口を開いた。
「…んまあ近藤さんよ、とりあえず試合をさせてみよう。それから考えればいんじゃねえか?」
どうやら芹沢は驚いたものの惠瑠の発言に賛成みたいだ。どうなるか興味がわいたらしい。この生意気な女子がどこまでもつのか。
近藤もさすがにここまで芹沢に頼まれて断れなかったのか、渋々首を縦に振り了承してくれた。
しかし、土方はいまだ認めておらず終始惠瑠を睨んでいた。
惠瑠はその視線に気づいていたがあえて知らない振りをし、よっこいしょと呟きながらその場を立ち上がり襖に手をかけた。
そして、
「さあ、行こっか」
と不適に笑って。