夢の途中
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まだかな…。
いまだ、試合が始まらないことに惠瑠はそろそろ限界が近く、握ってる竹刀はミシミシと音をたてている。
短気な惠瑠にとって長い時間は耐えられない。
しかし、そこに1人の青年がやってきた。長身で細身、爽やかな人だなと惠瑠は思った。
でも、わかった。
――これが沖田総司だと。
沖田はニコリと惠瑠に笑いかけた。
「あなたが僕と試合をしたいと言った人ですね?」
「はい」
「よろしくお願いします。えーっと…」
「足立惠瑠」
「惠瑠さん…、やはり変わった名前ですね」
クスクスとこの空気には似合わない笑いをした。惠瑠は、この男は空気を読めないのかと半分呆れたが、意外に話しやすい人だから少し安心した。
剣の天才なんて呼ばれたから、てっきりゴリマッチョみたいな男だと思ってたけど実際は違ってたみたいだ。でもオーラは感じる。
――ま、でもこれで始められるな。
惠瑠は床に胡座をかいてる芹沢に目を向け合図をする。
「さあ、さっさと始めよっか」
この場の空気が更に張りつめた。