夢の途中
惠瑠はもう一度竹刀を軽く振り、沖田と向かいあうように立つ。
道場特有のこの蒸し暑さで惠瑠の額から小さな汗の雫が顎へと伝う。
「惠瑠さん、始めに言っておきますが僕は手加減というものがありません。だから面を――」
「結構、無くても十分ですから」
「…そうですか」
惠瑠は沖田の言葉を遮断し、ゆらゆらとかまえる。
そして、芹沢の鉄扇が閉じるパチンという音を合図にダンッと地面を蹴り、
バシイィィィン
とお互いの竹刀がぶつかり合う。惠瑠は体制を崩し、少し押されるが踏ん張り前傾体制をとる。そんな中、惠瑠の動きに沖田が口を開く。
「…1つ聞いてもいいですか?」
「1つならね」
「あなたは僕の力を試したのですか?今のは受けの体制です」
バンッといい、お互い距離をとる。
「気のせいじゃないですか?」
「いや、しかし…」
――では今の目力と力は一体…。
「もういい?1つだけでしょ?よそ事考えてると、…死ぬよ」
惠瑠はニヤリと笑い再び竹刀を沖田に向けた。