夢の途中
「よかったな!これからよろしく頼むぜ、新人さんよ!」
「はあ……(馬鹿力だな)」
「ばっ!このバカ左之!」
永倉は慌てていたが、もう2回目で慣れたのか惠瑠は大して痛そうにはしなかった。ある意味呆れ顔で原田を見ていた。そんな惠瑠を見て沖田はまたしても笑っていた。
「本当あなたは面白い人ですね。見てて飽きません」
惠瑠は何が面白いのか分からず、わしゃわしゃと頭を掻いて首を傾げる。すると、こちらを見ていた土方とふと視線が重なった。まだ不服そうな顔をしていて、その場から動かず胡座をかいていた。
惠瑠は一度ため息を吐いて、よっこらせと片膝をついて立った。まだあの男とは決着がついていない。話さなければ…。
近藤たちには認めてもらえたが土方だけはまだだ。そんな状況で入隊しても気まずいだけ。そんなのは嫌だ。
これから仲間として共に過ごすのだ、平和にいきたいと思うのは惠瑠だけだろうか。
「あの」
「……」
おっとー、無視ときましたか。
「あなたは私のことが気に入らないと思うけど、私はここでやりたいことがあるんです。だから――」
「俺はお前が入ることは認めない。…だが、俺がどうこう言える立場じゃねえ、決めるのは近藤さんだ」
邪魔だけはするな、そう言って惠瑠を見上げる。その顔には近藤に忠実で信頼している表情がポーカーフェイスから少しだけ覗かれた。土方はそれだけ近藤を尊敬し、仲間として友として大事に思っているのだ。
「邪魔にならないよう気をつけます。……土方さん」
惠瑠が初めて土方の名前を口にしたことに土方は一瞬目を見開き驚いた。
しかし、すぐに真顔に戻り「ああ」とだけ言ってそのまま立ち上がり道場をでて行った。