夢の途中
稽古にはまったく出ようとせず、ひたすらお昼寝。かと思えば何か真剣な顔して考え事をしていたり…となんとも掴みにくい女子だ。
女扱いの得意な原田でさえもお手上げ状態。まるで野良猫のような女子。
…でもどうしてか気にかけてしまう。
まったく……不思議だ。
「そんなに見ないでください。逃げませんよ。」
―――ほらな、ぼーっとしてるかと思えばこんなことにもすぐ気づいてしまう鋭いところもある。
俺に背を向けて寝てるくせに。
原田はなんとも言えない気持ちを抱きながらも惠瑠から視線を外した。
普段の自分なら笑って通せるが、なぜか2人になると惠瑠の雰囲気に呑まれてしまう。
「ほんと…敵わないな。」
「?」
原田は1人苦笑しながら再び惠瑠に視線を戻せば、惠瑠はいつの間にかこちらを向いてて原田の意図がわからなく首を傾げていた。
「なにが敵わないんですか?」
「いや…、俺もまだまだだなあと思っただけさ」
「はあ…」
惠瑠は眉間にシワを寄せて、わけがわからないと言いたげな顔をしていた。
まあ、いっか…。
これからずっと共に暮らしていくんだ、少しずつ彼女を理解していけばいい。
原田が真剣に考えていることを知らない惠瑠はこてんこてんと首を傾げていた。
そんな惠瑠の子供らしい顔を見て、また新しいものが見れたと原田は1人微笑んだ。