2年3組乙女事情
ぴったり収まったカゴの音を聞くのと同時に、忘れたことに気付いたボクは
慌ててお財布を取り出して、急いで卵の売り場を目指した。
「っおわ!」
「……ほぇっ!?」
焦って前も見ずに進んでたせいだと思う。
目の前にいた人に気付かなかったボクは、その人に思いっきりぶつかった。
ぶつかった拍子に、お財布が手から滑り落ちる。
別に倒れもしなかったし、痛くもなかったけど……
何となくぶつけた額に手を当てながら、頭を下げた。
「す、すみませんっ!」
「あぁ、気にしないで。それよりも、大丈夫だった?」
降ってきた優しい声に、ばっと顔を上げる。
そこには、心配そうに眉を寄せた、スーツ姿の男の人が立っていた。
「あ……わ、たしは、平気です!あの……大丈夫でしたか?」
何となく“わたし”を使った自分に驚きながら、ボクはその人の顔を覗き込んだ。
「俺は平気だよ。ちょっとびっくりしただけ。あ、これ、君のだよね?」
落ちた財布を拾おうと、男の人が床に手を伸ばした。
落ちた拍子にぱかっと開いたお財布からは、学生証が飛び出してる。
……ってか写真付きだし、これは見られたくないかも!
慌てて受け取ろうと手を伸ばすと、男の人は不思議そうな顔をした。
「仲程唯真……って、ゆい?」
「え?」