2年3組乙女事情
少し気まずそうに卵焼きをつまんだくるみが、さっきと違って静かにボクを見た。
でも、その質問の答えはボクにもよくわからない……――――
「……気付いたらもう、“ボク”って言ってたんだよね。親も結構その辺りは気にしなかったみたいだし。
自分では気にしたことなかったけど、やっぱり変なのかな?」
「うーん……まぁ、くるみも先生の前では自分のこと“私”って言うようにしてるし、世間的に考えたら普通じゃないのかもね。それが悪いとは思わないけど……。
唯真ちゃんだってそうでしょ?」
先生の前では“私”にする……。
確かに、そうする気持ちは何となくわかる。
格好良いって人気の穂高先生なら、若そうだからまだ大丈夫かもしれない。
でも、ボク達の担任の前で言ったら……――――
たぶん、しばらく職員室を出れなくなる。
「そっか。だからかな?昨日、こーちゃんの前でとっさに“わたし”って言っちゃった」
「本当に?てゆーか、唯真ちゃんって昨日制服だったんだよね?」
「うん。学校帰りだったし」
軽くうなずいたボクを見て、くるみは眉間にしわを寄せた。
ボク、何かマズいこと言ったかな……?
そう思って、ボクもくるみと一緒に頭を働かせる。
「もしかして、彼、唯真ちゃんのこと“リア女生”って思っちゃったんじゃない?」