2年3組乙女事情
「リア女生?間違ってなくない?」


「そうなんだけど!ほら、周りの人って、リア女生はみんな上品で、丁寧で、『ごきげんよう』なんて挨拶してて……って、間違った想像してるでしょ?」


「こーちゃんも、ボクをそう思ってるってこと?」



首を傾げたボクに、くるみは大きく頷いた。



「そう! だって、唯真ちゃん制服だったし、お手伝いで買い物してたし、お財布も私服と違って可愛いのにしてるし、……“わたし”って言ったでしょ?だから……」


「なるほど……」



こーちゃんと仲が良かったのは小学生の頃だし、高校生になって“リア女生”らしくなったってこーちゃんが思い込んでも、別に変じゃないかもしれない。



昔だってボクは割とみんなの後について行くタイプで、どっちかっていうとおとなしかったから……


リア女生って思い込みに、ボクは自分で手を貸しちゃってることになるわけだ。



「それだと大変だよー?ずーっとおしとやかな振りして付き合うなんて、絶対無理!」



そう言って、くるみは大げさに顔を歪めた。


小さく首を震わせるくるみは、本当に嫌そうな顔をしてる。



あれ……?



「あのさ、何でこーちゃんとボクが付き合う設定になってるの?」


「え? 今って恋バナでしょ? 栞那ちゃんが羨ましいって話から入ったから、てっきりそうかなって……」


「いきなり話が飛びすぎだよ!こーちゃんとは、昨日久しぶりに会ったばっかりだし。向こうもボクも、何とも思ってないよ」



空になったお弁当箱を片づけながら、ボクはちらっとくるみを見た。



「ふーん……。まぁ、そーゆーことにしてあげても良いけど?」



少し不満そうな顔をしたまま、くるみはボクに目を合わせないで、最後の卵焼きを食べた。




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