2年3組乙女事情
小さくそう呟いて、ボクはもう何回目かわからない溜息を落とした。



「ねぇ、1人?」



うつむくボクの、後ろ側。


いきなり耳元で聞こえた声に、ボクはびくっと肩を動かした。



「俺ら、今暇なんだけどさ、一緒に遊びに行かない?」


「……結構です」



気付いたら、両サイドを知らない男の人が歩いてた。



こーゆーのを、ナンパって言うの?



まだ駅前の賑わいが抜けないこの道なら、ナンパをする人がいてもおかしくないかもしれないけど……


こんなこと初めてのボクは、どうやって切り抜ければ良いのかわからない。



「そんな固いこと言わないでよ。リア女って厳しいんでしょ?少しは息抜きも必要だって」


「そうそう。伝統なんて、今時流行んないからさ」



歩くペースを速くしてみたけど、そんなのお構いなしって言うように、男の人達は言葉を続けた。


ジーンズの先から見える、先のとがった靴と香水の匂いが、何となく気に入らない。



少し力を込めてそう言って、ボクはもっと早く歩いてみた。



「ねぇ、無視はやめようよ。ちょっと……」



あっさりと追いつかれて、いきなり腕に手を伸ばされる。



夏服のカッターシャツは、スカートと同じピンクの糸でステッチが入ってて、胸に椿型の校章が付いてる。



当り前だけど半そでのカッターシャツから出た腕に、男の人の手が当たった。



「やめて下さいっ!ボクは……」


「ボク?何それ。君、女の子でしょ?」
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