2年3組乙女事情
思わず引っ込めようとした手を掴まれて、男の人の顔を見上げた。
眉間にしわを寄せるその人が怖くて、思わず目を逸らす。
「離して下さい……。わたし、本当に……」
「何で次は“わたし”?リア女にもこんな変わった子いるんだー」
「つーか、むしろコスプレだったりして」
頭の上で、面白そうに男の人達の会話が進む。
初めはナンパみたいな迷惑な行動が嫌で、逃げてるだけだった。
早く別の人を探せば良いのにって思いながら、しつこい2人を鬱陶しがってるだけだった。
でも、今は違う。
自分のことを“わたし”って言えない自分から、逃げたい。
やっぱりボク、変なんだよ……――――
「別に、変わってないから」
え……?
「むしろ、そんなに嫌そうにしてる子に絡み続けてるあんた達の方が変わってると思うけど?」
すぐ近くから聞こえてきた優しい声に、ボクは思わず顔を上げた。
「こーちゃん……」
昨日と何も変わらない、あったかい声が、今はものすごく嬉しい。
こーちゃんに話しかけられて男の人の手が少し緩んだのに気付いて、ボクはそれを思いっきり振り払った。
びっくりする2人の間を抜けて、こーちゃんの後ろに隠れる。
そんなボクを見て、こーちゃんはにっこりと微笑んだ。