2年3組乙女事情
「うーん……ナンパ目的だったなら、もうどっか行ってもらえる?これから俺ら、デートだから」
余裕な表情でそう言うと、こーちゃんはボクの右手を引いて男の人達の横を通り過ぎた。
背中の方で、面倒臭そうに呟く男の人達の声が聞こえる。
引っ張られた腕のせいで少し足がもたつく。
昨日とは違って歩くのも早くて、ついて行くのが精一杯だった。
でもそんなこと、今はどうでも良い。
汗とか、夏だからとか、そういう理由でじゃなくて、右手が熱くて……
ボクの頭には、それ以外のことを考える余裕なんてなかった。
それに、目の前に見えるこーちゃんの背中はものすごく大きくて、少し怖かった。
「あの……」
さっきの賑やかな道をまっすぐに突き進んで、少し静かな場所まで来たところで、こーちゃんは足を止めた。
周りには、家とか小さな公園とか。
中途半端な時間だからか、人は誰もいなかった。
「とりあえず、無事で良かった。ゆいは昔からしっかりしてるくせに、危なっかしいとこがあるから」
「ごめん。あり、がと……」
「どういたしまして」
そう言うと、こーちゃんはつないでた手をすっと離して、そのままボクの頭に乗せた。
「あと、さっきも言ったけど、全然変だとは思ってないから。むしろ、少し嬉しかったし」
「え……?」