2年3組乙女事情

「うーん……ナンパ目的だったなら、もうどっか行ってもらえる?これから俺ら、デートだから」



余裕な表情でそう言うと、こーちゃんはボクの右手を引いて男の人達の横を通り過ぎた。



背中の方で、面倒臭そうに呟く男の人達の声が聞こえる。


引っ張られた腕のせいで少し足がもたつく。


昨日とは違って歩くのも早くて、ついて行くのが精一杯だった。



でもそんなこと、今はどうでも良い。



汗とか、夏だからとか、そういう理由でじゃなくて、右手が熱くて……


ボクの頭には、それ以外のことを考える余裕なんてなかった。



それに、目の前に見えるこーちゃんの背中はものすごく大きくて、少し怖かった。





「あの……」



さっきの賑やかな道をまっすぐに突き進んで、少し静かな場所まで来たところで、こーちゃんは足を止めた。



周りには、家とか小さな公園とか。


中途半端な時間だからか、人は誰もいなかった。



「とりあえず、無事で良かった。ゆいは昔からしっかりしてるくせに、危なっかしいとこがあるから」


「ごめん。あり、がと……」


「どういたしまして」



そう言うと、こーちゃんはつないでた手をすっと離して、そのままボクの頭に乗せた。



「あと、さっきも言ったけど、全然変だとは思ってないから。むしろ、少し嬉しかったし」


「え……?」

< 120 / 278 >

この作品をシェア

pagetop