2年3組乙女事情
「ゆい、あの時もそう言ってたよ。でも実際、俺がちゃんと見てて守れてたら、ゆいはあんなに泣かなくて済んだんだし。
そう思ったら俺、本当に自分が情けなく思えて、少し泣きそうでさ」
「そんな……」
「でも、そんな俺に、ゆいは『こーちゃんはちゃんと守ってくれた』って言ってくれたんだよなー」
「え……?」
「俺は、ゆいの中でヒーローだったらしいぞ?それで、『ゆいもこーちゃんみたいになるんだ』って言いだして……」
何かボク、ものすごく恥ずかしいことを言ってる気がする。
これだけ話してもらっても、全然当時のことは思い出せない。
それでもボクの心臓は、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
子どもの頃とはいえ、何言ってんだよ、ボク……。
「それからだよ。ゆいが自分のことを“ボク”って呼ぶようになったの。それまでは、“ゆい”って言ってたし。
俺が昔は“僕”って言ってたから、真似したんだろうな」
「何か、ものすごく恥ずかしいんだけど」
「そうか?俺は、あの時嬉しかったよ。自分がこんなにも頼られてるんだーって思って。
昨日会った時に“わたし”って言ってるの聞いて、当然だとは思ったけど、少し寂しい気もしたし」
そこまで言うと、こーちゃんは片手を首の後ろに当てた。
気まずそうに小さく笑って、また口を開く。
「久しぶりに会ったし、昨日のは反射的に出てきたんだな。俺を“大人”だとでも思ったか?」