2年3組乙女事情
不思議そうにするこーちゃんに向かって、ボクはごまかすみたいににっこり笑いかけた。
そのまま、歩くスピードを上げる。
さすがに、普段の服装については……もう少し隠しておこう。
「ちょっ……ゆいっ!」
後ろから、少し焦ったみたいな声が聞こえる。
ちょっと振り返ってそんなこーちゃんを見てから、ボクは小さく笑った。
ボクがボクを“ボク”だって呼ぶきっかけになった出来事を、ボクは今も思い出せない。
でも、呼ぶきっかけになった人は
今も昔も、優しくて、頼りがいがあって、ちょっと意地悪な……
ボクの大切なヒーローだ――――
それがわかっただけでも、ボクは結構満足してる。
だって、ボクがボクを“ボク”って呼ぶことは、ボクに格好良い味方がいるって
誇れる証なんだから。
「ったく、勝手に早く歩くなって。送るって言ってるのに」
「ちゃんと見ててくれるんだ?」
「当り前だろ。こんな可愛い子を血まみれにするわけにはいかないし?」
にやりと笑ったこーちゃんから、ボクは思わず視線を逸らした。
あ、今日のことは、くるみにはまだ内緒にしよう。
うん。
絶対その方が良い……!
そう考えた瞬間、何故か熱くなった頬が恥ずかしくて、ボクは思わずうつむいた。
でも、その原因が隣で楽しそうに揺れる影だって気付けないボクは……――――
……仲程唯真、人生最高レベルの難問に、またまた出会ってしまいました。
~9番 仲程唯真 END~