2年3組乙女事情

もう一度溜息を吐こうとした時、明るい声が聞こえてきた。



その方向に視線を送ると、ジャージ姿の武藤実涼[むとうみすず]ちゃんがいた。



1年生の時にも同じクラスだった実涼ちゃんは、なかなかのロマンチスト……

っていうか、正真正銘の“乙女”って感じの子。



今のクラスでは席も隣同士になったから、よくおしゃべりもする。


1番後ろの席って、結構特等席なんだよね。



シンプルなポニーテールが、実涼ちゃんの着るジャージにぴったりで……


だけど、普段の実涼ちゃんとは全然イメージが違ってびっくりする。



「どうしたの?その格好……」


「あ、これ?似合わないよね……。私ね、今、ジョギングしてたの」


「ジョギング?」


「うん。恥ずかしい話なんだけどさ、昨日体重計乗ったら、ちょっと太っちゃってて……」



苦笑いをする実涼ちゃんの動きに合わせて、ポニーテールが揺れる。



額にうっすらと広がった汗は、くるみのものとは比べ物にならない量で……


ここまで頑張って走って来たんだってことを感じさせてくれた。



「だから、今日から走ってみようかなって。何か、似合わなくって変でしょ?」


「え……」


「私は帰宅部だし、運動なんて今まで1回もちゃんとやったことないし。
このジャージなんて、お母さんのだしね」


「じゃあ、何でジョギングなんて?」


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