2年3組乙女事情

「亜希帆、これそこで拾ったけど?」



次の日の夕方。


先生達の会議のおかげで早く下校できたあたしは、部屋で本を読んでいた。



意外かもしれないけど、一応あたしだって本くらい読むんだよ?


……まぁ、読んでる内容が恋愛小説に偏ってるのは、まぁ、アレだけど。



玲ちゃんみたいにいろんな本を読めちゃうすごい人には、あたしはまだまだなれそうもない。


だって、漢字がたくさん並んだりすると頭痛くなっちゃうし。



そんなわけで、ベッドに寝転がってピンクの表紙が可愛い恋愛小説を読んでたあたしは、突然開いたドアにびくっと肩を震わせた。



「お兄ちゃんか……何?」


「だから、コレ」



大学2年生になるお兄ちゃんの手には、しわの寄った白い紙があった。



「“進路調査”って書いてあるけど……これって大事なプリントだろ? 廊下に落ちてたぞ」


「うそぉ!?」



昨日貰ったばっかりのその紙は、何だか可哀想な感じに歪んでいて、あたしの何も決まってない将来を表してるみたいに見えた。



それをお兄ちゃんに見られるのが恥ずかしくて、急いでベッドを飛び降りる。



「亜希帆も進路なんて考える時期になったんだなぁ……。俺も、高校生の頃が懐かしいよ」


「そぉ? 卒業してから1年ちょっとしか経ってないじゃん」


「1年ちょっと経つと年齢の10の位が2になるんだよ。衝撃的だぞ」


「そういうもんかぁ……」



あたしがプリントを奪い取ると、お兄ちゃんは勝手にあたしのベッドに座って大げさに頷きながら話し出した。
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