2年3組乙女事情
冷ややかな視線を送るあたしを見て、お兄ちゃんが大げさに顔を歪めた。
本当、よく彼女さんはこんなお兄ちゃんで文句言わないよなぁ……。
「じゃあさ、参考までに聞くけど、お兄ちゃんはどうやって進路決めたの?
高2の秋にはもう決めてた?」
凹んでるお兄ちゃんを見るのが嫌で、あたしはそう切り返した。
……ちょっと、無駄な質問しちゃったかなとは思うけど。
「まず、家から1時間程度で通える大学を片っぱしから調べたな。2時間かけて通う奴もいるけど、それだと亜希帆に会う時間がなくなるし」
やっぱり無駄だった……。
「この辺りは大学が多いから、選ぶのにはそこまで困らない。
通える大学をピックアップした後は、自分の偏差値と志望分野を照らし合わせて絞って……まぁ、最終的には本番の出来で決めたよ。
俺は家から出ないって条件で絞ってたから、高2の秋には、何となく決まってた」
「それ、あたしのせいで志望校の幅が狭くなったんじゃない?」
当り前のように言葉を並べるお兄ちゃんを見て、少し不安になった。
お兄ちゃんの通ってた高校は、リア女よりもレベルの高いところだった。
共学の公立高校だから雰囲気もだいぶ違ってて……
いつも楽しそうに学校の友達のことを話してくれるお兄ちゃんが、ちょっと自慢だったんだ。
でも、お兄ちゃんはそんな仲の良い友達のほとんどと別れて今の地元の大学に進学した。
だから、あたしのせいでお兄ちゃんが志望校のレベルを下げてたり、行きたい大学に行けなかったんじゃないかって考えると、ちょっと苦しい。
「馬鹿なこと考えなくても良いんだよ」
お兄ちゃんは、あたしの頭の中なんて全部見透かしたみたいに大きく笑った。