2年3組乙女事情
「亜希帆、俺の通ってる学部の偏差値知ってる?」
「え……知らない」
「じゃあ、その本見てみな?」
そう言って、お兄ちゃんは小さめの太い本を指差した。
机の本棚でホコリをかぶりかけてるそれは、大学の偏差値がずらーっと書かれたもの。
良くわからない模様の表紙と、細かい数字が気持ち悪くて、ろくに開いたことはなかったけど。
受験には必須のアイテムなんだ、とは何となく思ってた。
「えっとー……」
お兄ちゃんの通う大学のページを頑張って探す。
新聞よりも薄いその本のページはちょっとめくりにくくて、何回も指が絡まりそうになった。
「あった!……って、高っ!?」
「だろ?」
大学名の横に書かれた偏差値……というか、その大学に入るために必要なセンター試験の得点率を見て
あたしは開いた口がふさがらなくなった。
他の学部もそこそこレベルは高いみたいだけど、お兄ちゃんの通うところはそれが飛びぬけてる。
どうりで、あたしが模試で遊んで学校名書いた時も、判定が悪かったわけだ。
「俺は、亜希帆に合わせてレベルを落とすどころか、勉強を頑張らなくてはいけなかったわけです。
高校の友達で同じとこ志望してる奴もいたけど、結局別のとこ受けてたし……。こればっかりは、どうしようもないけどな」