2年3組乙女事情
いつの間にかあたしの隣に立っていたお兄ちゃんを、そっと見上げる。
思い出してみれば、お兄ちゃんは確かに、受験前はいつ寝てるんだってくらい勉強をしてた。
よくわからない難しそうな参考書が、机の周りに放り出されてた気もする。
同じ時期にリア女を受験してたあたしは、そんなお兄ちゃんにつられて勉強を頑張ったんだ。
……そんなこと、すっかり忘れてたよ。
「確かに、俺は場所で大学を選び始めた。
でも、学部を決めたのは自分が理系だったからとか、化学に興味があったからとか、いろんな理由からだよ。
その中にはもちろん亜希帆のことも入ってるけど、そればっかで決めたわけじゃない」
「そっかぁ」
「まぁ、それが大半だったことは認めるけどな」
「え……」
思わず眉間にしわを寄せたあたしを見て、お兄ちゃんはまた笑った。
「進路決めるなら、まず自分が大学を選ぶ時に大事にしたい理由でも書き出してみたらどうだ?
リア女は進路指導が厳しいって聞くし、大学進学以外の進路は認められないって聞くから、この時期から結構大変だとは思うけど。
考え出す時期が早いことは、損にはならないから」
「そうかな?」
「条件をゆっくり整理して、『今はこの大学に行きたいから』くらいの気持ちで軽く書いてみろよ。
本気で決めるのはまたそのうち……ってさ。俺もちゃんと決めたのは3年になってからだし」
さらっと聞こえてきたお兄ちゃんの言葉に、思わず顔を上げた。
3年になってからって……それでも間に合うってこと?